焦点合成テクニック:Canon EOS 5D mark IV でのリモート撮影

Canon EOS 5D mark IV でのリモート撮影


EOS 5D Mark IV のようなキヤノンの一眼レフカメラには、最新のオリンパス機やニコン機の「フォーカスブラケット撮影」または「フォーカスシフト撮影」のような撮影機能が備わっていません。

したがってキヤノンの一眼レフで焦点合成のための撮影を行う時は、焦点をずらす操作を手動で行わなければならず、手間がかかります。

しかし、キヤノンの一眼レフでも、オートフォーカスレンズとの組み合わせでは、カメラをコンピュータと接続してリモート撮影(「リモートライブビュー撮影」)を行うことで、かなり楽に撮影をすることができます。

今回は、キヤノンの一眼レフ EOS 5D mark IV を使った焦点合成のためのリモート撮影(「リモートライブビュー撮影」)の方法を紹介します。


※2019年3月に新発売となるキヤノンのミラーレスカメラ EOS RP は「フォーカスブラケット撮影」が可能のようです!詳細はまだ不明です。

※「リモートライブビュー撮影」は、リモート撮影の中でも、コンピュータのモニター上で被写体を確認しながら操作できる機能です。
「リモートライブビュー撮影」は、EOS 20D 等の古い一眼レフだと対応していません。ミラーレス機では、EOS R やKiss M は対応していますが、M6等は対応していないようです。



EOS Utility を用意する

キヤノン機でコンピュータと接続してリモート撮影を行うためには、キヤノンのソフトウェア EOS Utility が必要です。
EOS Utility の入手、インストールについてはキヤノンのホームページを参照してください。EOS Utility はユーザーであれば無料で入手できます。


カメラとコンピュータを接続する

EOS 5D mark IV とコンピュータを接続する方法は、カメラ付属のインターフェースケーブル(USB 3.0)を使った有線接続と、カメラ内臓の通信機能(Wi-Fi機能)を使った無線接続があります。

有線接続は、ケーブルでカメラとコンピュータをつなぐだけでよいので、接続の仕方がとても明快で、接続中も安心感がありますが、ケーブルの長さが十分でなかったり、ケーブルが邪魔になったりして、不都合な場合もあります。ノート型コンピュータを使うと便利ですね。

無線接続には、カメラとコンピュータを直接接続するやり方と、無線ルーター等を介して接続するやり方があります。いずれも接続時のカメラとコンピュータの設定が少し面倒ですが、ケーブルが不要のため機器の設置が自在で便利です。
カメラとコンピュータを無線で直接接続するやり方だとコンピュータの無線でのインターネット接続を解除することになりますが、ルータを介する接続であれば、カメラとコンピュータを接続している最中でもインターネットの接続が保たれます。

それぞれの接続の仕方はカメラのマニュアルを参照してください。
どの方法で接続しても EOS Utility の操作に違いはありません。

ただし、有線接続の方がライブビューの反応が速く、データ転送も速く、動きがスムーズです。無線接続ではカメラとコンピュータを直接接続するやり方のほうが動作がスムーズです。(コンピュータや通信機器の性能にもよると思います。)この点で、有線接続の方が、また無線接続ではルータを介するよりも直接に接続した方が、ストレスが少ないです。

また、焦点合成のための撮影のように連続的に撮影する場合には、撮影画像の保存先をコンピュータにしないで、カメラ内メモリーカードのみにして撮影を行った方がよいかもしれません。データ転送を行わない分だいぶ軽快になります。

EOS Utility の起動

使用したコンピュータは Mac OS 10.14 で、EOS Utility のバージョンは 3.10.0 です。
カメラとコンピュータの接続がうまくできたら、EOS Utility を起動させます。EOS Utility が起動すると、まずメイン画面が表示されます。そこで「リモート撮影」を選びます(1)。キャプチャー画面が表示されます(2)。キャプチャー画面の下部にある「ライブビュー撮影」ボタンを押すとリモートライブビュー画面が表示され、今カメラがとらえている像を見ることができます(3)。

(1)EOS Utility  のメイン画面。「リモート撮影」を選択。


(2)キャプチャー画面。下部の「ライブビュー撮影」ボタンを押す。


(3)リモートライブビュー画面が表示された状態。

EOS Utility の操作ボタン

今回使用する主な操作ボタンは以下のものです(4)。

<キャプチャー画面内>
1.レリーズボタン
カメラのレリーズボタンに相当します。カメラのレリーズボタンを押す時と同様に、マウスのクリックをしっかり押し込む(少し時間をかけて押し続ける)ようにしないと撮影されません。

2.AF/MF切り換えボタン
このボタンが「AF」の方になっていると、1のレリーズボタンの上にマウスオンの状態(カーソルを合わせた状態)で、ピント調整動作が行われます。今回の場合はそれだと不都合なので、「MF」側にしておく必要があります。

3.撮影画像の保存先設定ボタン
撮影した画像の保存先をコンピュータ側に設定した場合、画像の転送の時間がかかるので、連続的に撮影する際には、待ち時間が発生します。カメラ側のメモリーカードに設定した方が良いでしょう。

4.ライブビュー撮影ボタン
リモートライブビュー画面を表示させるときに押します。


<リモートライブビュー画面内>
5.フォーカスONボタン
このボタンを押すと、AFフォーカスフレームを置いたところのピントを合わせが作動します。

6.フォーカス調整ボタン
ピントを調整するためのボタンです。このボタンが今回の撮影の要となる操作ボタンです。左から「<<<」「<<」「<」「>」「>>」「>>>」の6つのボタンがあり、「<<<」「<<」「<」の3つは手前側に焦点位置を動かし、「>」「>>」「>>>」の3つは奥側に焦点位置を動かします。「>」よりも「>>」や「>>>」は動く量が大きくなります。

7.AFフレーム表示ボタン
AFフレームの表示/非表示を切り換えます。表示させた状態にしましょう。

8.拡大表示ボタン(×5)
拡大表示させたいときに押します。


(4)使用する主な操作ボタン


被写体のセット、フレーミングの調整

今回は新生代の二枚貝化石を真俯瞰で撮影するセッティングにしています。
レンズは SIGMA MACRO 70mm F2.8 EX DG を使用しました。

コンピュータの画面を見ながらフレーミングの調整を行うのは、カメラの液晶モニターを見る時とは勝手が違います。カメラのすぐ傍にコンピュータを置く場合はさほどでもないと思いますが、離れていると体を行ったり来たりさせなくてはならなくて面倒です。その際は迷わずカメラ側で、カメラのライブビューをオンにしてフレーミングを調整しましょう。この時、光学ファインダーを覗くためにカメラのライブビューをオフにすると、コンピュータ側でもEOS Utility のリモートライブビュー画面が閉じてしまいます。その場合はもう一度 EOS Utilityで「ライブビュー撮影」ボタンを押してリモートライブビュー画面を再表示させます。


EOS Utility で焦点を少しづつずらしながら複数枚撮影する

フレーミングが決まったらいよいよ撮影です。撮影の手順として、まずは、被写体の一番手前のところにピントを合わせます。
リモートライブビュー画面で、ワンクリックでピントを合わせたい箇所にオートフォーカスフレームを置いた後「フォーカスON」ボタンを押すと、そこにピントを合わせてくれます。ですので、被写体の一番手前のところをワンクリックしてフォーカスフレームを置いた後、「フォーカスON」ボタンを押します(5)。
ピントを合わせるためには、ワンクリックでフォーカスフレームを置いた後にそのオートフォーカスフレーム内をダブルクリックしても同じです。ただし、フォーカスフレームが移動しきらないうちにダブルクリックしてしまうと、ピント合わせではなくて、拡大表示が行われてしまうので注意が必要です。

※オートフォーカスフレーム表示がオンになっている必要があります。



(5)被写体の一番手前のところにAFフレームを置き、「フォーカスON」ボタンを押す。


そこから拡大表示をしてピントの状況を確認しましょう。必要があれば「<」や「>」ボタンをクリックして求める一番手前にピントを合わせましょう(6)。

(6)拡大表示をさせてピントの確認。


これで撮影準備完了です。操作画面(キャプチャー画面)のレリーズボタンをクリックすると最初の一枚が撮影されます(7)。

(7)レリーズボタンを押して最初のコマを撮影。


後は、フォーカス調整ボタンの「>」ボタンを1回クリック(8)してからレリーズボタンをクリックすることを何度も繰り返せば、焦点位置を奥側に少しずつずらして撮影していくことになります。ライブビュー画面では、焦点位置がずれた様子を見ることができます(9)。カメラボディーやレンズにふれること無く、確実な操作で撮影が行えます。

※レリーズボタンをクリックする時は、前にも述べたように、軽く一瞬押すのではなく、カメラのシャッターボタンを押す時のように少し押し続けるような感じでやりましょう。

※「>」ボタンを押し続けると焦点位置が移動し続けるので、「>」ボタンの方は1回普通にクッリクするだけにします。

※またレリーズボタン右側の「AF/MF切り換えボタン」は「MF」にしておく必要があります。これを「AF」にしたままだと、レリーズボタンのマウスオンやクリックの際に再度ピント合わせが行われてしまいます。


(8)「>」ボタンを押して焦点位置をずらす。


(9)焦点位置が奥側にずれていく。


ライブビュー画面をみながら、被写体の一番奥までピントが到達したら(10)、最後の撮影をして終了です。


(10)一番奥まで焦点位置が到達。

このリモート撮影を使えば、(フォーカスブラケット撮影機能のないカメラの場合でも)焦点合成のための撮影がかなり楽にできると思います。

レンズのピントリングを手動で少しずつ回す操作は非常に不安定、不確実な操作なのでやりたくありませんが、このリモート撮影では、安定した動作となるのでおすすめすることができます。


※この操作を繰り返していると、EOS Utility上で「>」ボタンやレリーズボタンをクリックするのが少し面倒に感じてきます。これらのボタンをクッリクする代わりになるショートカットキーがあるにちがいないという期待をしているのですが、いまのところ確認できていません。

※焦点位置がずれる量は「>」よりも「>>」「>>>」で大きくなります。「>」にくらべて「>>」が倍、「>>>」が3倍のずれ量ということにはなっていません。「>>>」 のずれ量は結構大きいです。「>」と「<」でずれる量は同じではありません(今回使用した SIGMA 70mm Macro の場合では手前にずらす「<」の方がずれる量が大きいです)。またレンズによってずれる量は異なります。レンズのオートフォーカスステップ数と関連しているのだと思いますが、細かくずれるレンズと比較的大きくずれるレンズがあります。手元のレンズでは、EF 100 mm Macro IS はとても細かく、SIGMA 70mm Macro は比較的大きくずれる方です。「>」であまりにも細かすぎる時は「>>」の方が良いかもしれません。


焦点合成の結果

焦点合成の結果です。合成には Zerene Stacker を使いました。

Canon EOS 5D mark IV, SIGMA 70mm Macro, F4, Zerene Stacker PMax, 38枚を焦点合成
Canon EOS 5D mark IV, SIGMA 70mm Macro, F4, Zerene Stacker PMax, 38枚を焦点合成


※2019年2月15日にリリースされたキヤノンの現像ソフトウェア Digital Photo Professional (DPP) の最新版(4.10.0)には、「深度合成ツール」というのが追加されました!このツールは、EOS 5D Mark IV、R、RPで撮影した画像に対して使用できるようです。
今回 EOS 5D Mark IV を使用していますが、DPPの「深度合成ツール」はまだ試していません。近いうちに試してみようと思います。


タブレットやスマートフォンと無線で接続してもリモート撮影が可能

専用のアプリ「Camera Connect」を使うと iPadやスマートフォンとカメラが無線で接続でき、リモート撮影を行うことができます。

Camera Connect でも焦点位置を少しずつずらして撮影していくことができます。

EOS Utility の操作画面とは異なるインターフェイスですが、ピント調節のための「<<<, <<, <, >, >>, >>>」ボタンが用意されています。

「>」ボタンとレリーズボタンを繰り返し押す操作に関しては、コンピュータのマウスでのクリック操作よりもタッチパネルでの指先でのタッチ操作の方が効率よくできます。

タブレットだと画面もそれなりに大きいので、けっこう良い撮影方法かもしれません。


iPad でも Camera Connect によりリモート撮影が可能。