貴重な Nikon Macro Nikkor レンズ群

Nikon Macro Nikkor Lenses

ニコンの「大型マクロ写真撮影装置 マルチフォト(Multiphoto)」のために設計されたレンズは Macro Nikkorと銘打たれ、焦点距離の違う4種が用意されていました。

このニコンのマルチフォトというのは、ライツ社のマクロ撮影装置にならったものだと思いますが、マルチフォトのカタログによると

“・・・ニコンマルチフォトはカメラによる一般写真撮影と顕微鏡による高拡大撮影の間に存在する中間拡大倍率における写真撮影を容易にしたことにとどまらず、マルチフォトとして一歩進んだシステムを実現しました。35mm判、あるいは4×5インチ判を利用するマクロ写真撮影においてプロフェッショナルな要求を満足させるニコンマルチフォト。ニコンが自身をもっておすすめできる高級機です。”(1987年カタログより)


とあります。ニコンが「自信をもって」作った完成度の高いすばらしいシステムなのです。
さらにレンズ等の記述を引用すると


“高解像力マクロニッコール撮影レンズは4種類。

マルチフォト用に特別に設計された高解像力マクロニッコール撮影レンズはシャープな画像で微妙な物体の構造を忠実にとらえます。目的に合わせてライカマウントタイプの120mmF/6.3、および65mmF/4.5と顕微鏡対物レンズマウント、ライカマウント併用タイプの高倍率用35mmF/4.5、および19mmF/2.8の4種類の撮影レンズを選択することができます。また、これらの撮影レンズに合わせて、それぞれ専用の透過照明用コンデンサレンズを用意しています。”

“拡大倍率の設定と照明システムの調整が容易にできる、カラーコード表示方式。
撮影レンズやコンデンサレンズを交換するときにはその撮影レンズとコンデンサレンズに適した照明系および拡大倍率に相当したレンズ位置を設定することが必要です。ニコンマルチフォトではこれらの操作を簡便にするため、カラーコード表示方式を採用しています。まず最初に、使用する撮影レンズについているカラーコードに合わせて、コンデンサレンズを選びます。つぎに蛇腹支柱を動かして、同一のカラーコードの線に合わせれば準備完了です。撮影レンズおよびコンデンサレンズには下記のカラーコードが採用されています。
120mmレンズ:赤  65mmレンズ:黄  35mmレンズ:青  19mmレンズ:白 ”(同1987年カタログより)


このカラーコードに従って各レンズの鏡筒には色付けされた線が入っています。顕微鏡の対物レンズも倍率によって違う色の線(4倍が赤、10倍が黄、20倍が黄緑など)が付けられていますね。それと同じような感じです。このレンズの色分けはデザイン的にもなかなか洒落ていて好ましいものです。

焦点距離の異なる4つのレンズは、マルチフォトを使用する時の撮影倍率の範囲が次のようになっています。
120mm:1/2倍〜4倍(35mmセットの時),1.2倍〜4倍(4×5セットの時)
65mm:3.5倍〜10倍
35mm:8倍〜20倍
19mm:15倍〜40倍

また、レンズの絞りの表示は独特で、普通の絞り値(F値)ではなくて、1〜6ないし7までの数字の指標で表示されています(120mmは指標1〜7まで、他の3つは指標1〜6まで)。
この指標「1」が絞り開放の位置で、数字が1増えると1段分絞られることになります。絞りは連続的に変えられます。

この数字の指標だと感覚的に捉えにくいので、F値に置き換えると次のようになります。
120mm:1=F6.3、2=F9、3=F13、4=F18、5=F25、6=F36、7=F51
65mm:1=F4.5、2=F6.3、3=F9、4=F13、5=F18、6=F25
35mm:1=F4.5、2=F6.3、3=F9、4=F13、5=F18、6=F25
19mm:1=F2.8、2=F4、3=F5.6、4=F8、5=F11、6=F16

普通のF値で表現しない訳は、おそらく、撮影倍率によって実効F値が変わる(露出倍数が変わる、撮影倍率が高くなるほど暗くなる)からではないかと思います。ただ、実効F値で考えるとかえってややこしい気がするので、普通のF値で置き換えてみました。普通にカメラで測光(TTL測光)する場合には、実効F値や露出倍数のことはあまり意識しなくても大丈夫でしょう。

120mmと65mmのレンズは、指標の数字の位置でストップできる(絞りリングがそれ以上回らなくする)機能がついています。この機能により、開放でピントを合わせた後に求める絞りに迷い無しにすばやくセットすることができます。

これらマクロニッコールは、等倍から20倍程度の撮影領域で現在でも活躍してくれるレンズです。カタログの文言にもあるように、普通のマクロレンズを使う撮影と顕微鏡写真との中間に位置するような領域ですね。19mmを使えば40倍までいけるので大したものです。マルチフォトを使用しなくても、ニコンのベローズ等でも使えます。
むしろデジタルカメラの時代ゆえに撮影もしやすく、焦点合成などで活用の場も広がるでしょう。中古で入手が困難で高価でもあり、大切に受け継いでいくべきレンズです。

やはり4つのレンズが全部そろっていると安心できますね。
(職場所有のレンズです(^o^)/)

各レンズのテスト撮影はこちら
Nikon Macro Nikkor 12cm F6.3のテスト撮影
Nikon Macro Nikkor 65mm F4.5のテスト撮影
Nikon Macro Nikkor 35mm F4.5のテスト撮影
Nikon Macro Nikkor 19mm F2.8のテスト撮影